
飲食店経営において、「原価率」は利益を左右する重要な指標です。ただ単に原価率を下げれば良いわけではなく、適切なバランスの維持が求められます。同じ業態や競合店舗の原価率を把握し、戦略的に原価率をコントロールすることが大切です。
本記事では、原価率の相場をランキング形式で示しながら、原価率を適正化するポイントについて解説します。原価率管理のノウハウを理解し、経営の安定化につなげましょう。
※■POINT※
・飲食店の原価率は30~40%が相場
・原価率は低くても高くても良いわけではない。適正な原価率を維持する工夫が大切
飲食店が継続的な利益を出すためには、コスト管理の最適化が不可欠です。なかでも食材にかかる「原価率」は非常に重要であり、原価率の煩雑な管理は経営を圧迫する要因となります。
原価率は、売上に対する仕入原価の割合です。飲食店での原価は、提供する料理や飲み物を作るためにかかる食材費や材料費を指します。計算式は「原価÷売値×100=原価率」です。
以下は原価率の計算例です。
(例1)定食1,000円で、食材原価が320円の場合
提供価格:1,000円
食材費:320円
原価率:32%
(例2)定食1,300円で、食材原価が550円の場合
提供価格:1,300円
食材費:550円
原価率:42.3%
(例3)定食1,500円で、食材原価が600円の場合
提供価格:1,500円
食材費:600円
原価率:40%
飲食店の利益は、売上から各種コストを差し引いた残りで決まります。その中でも、原価率は最も変動しやすく、利益に与える影響が大きい指標です。
原価率が高すぎると利益を圧迫しますが、低すぎると料理の質や顧客満足度が下がり、リピート率や客単価の低下につながるリスクもあります。原価率は「下げればいい」というものではなく、収益性と品質のバランスを取るうえで、継続的に調整・管理すべき指標です。
また、飲食店の利益率は「利益(売上−コスト)÷売上高×100」で算出され、原価だけでなく人件費・光熱費・家賃・宣伝費など、さまざまな経費が関係します。だからこそ、原価率の安定管理が店舗経営の土台となります。
飲食店の原価率の相場は、平均30〜35%程度です。株式会社帝国データバンクが発表した「主要外食 100 社」価格改定動向調査によると、2021年度の原価率は平均37.5%でした。原材料価格の高騰により、原価率が急騰し過去10年で最高の値となっています。
出典:株式会社帝国データバンク|「主要外食 100 社」価格改定動向調査
原価率以外で発生する経費の目安は、以下のとおりです。
目安 | |
原価 | 30~35% |
人件費 | 25~30% |
水道光熱費 | 5% |
家賃 | 10% |
消耗品費 | 3~5% |
宣伝広告費 | 5% |
そのほかの経費 | 5~10% |
例えば、原価率が30%、人件費が25%、水道光熱費が5%、消耗品費5%、家賃10%、宣伝広告費5%、そのほかの経費10%の場合、利益は10%となります。原価を含む経費の割合が下がると、利益が上がる仕組みです。
原価率が高い食材は、和牛や牛肉、海鮮、寿司、チーズなどがあります。一方、原価率の低い食材は、粉ものや旬の食材、サイドメニュー系、かき氷、大量に仕入れできるものなどです。
飲食店の業態別原価率ランキング1位は、寿司屋です。原価の高い食品を扱う店舗は、客単価も原価率も高くなる傾向にあります。ここでは、ランキングTOP10の業態を解説します。
寿司屋の原価率は40〜50%が相場です。特に、ウニやマグロ、いくら、カツオは原価率が高い傾向にあります。寿司で提供されている主なネタの原価率は、以下のとおりです。
ネタ | 原価 | |
1位 | ウニ | 85円 |
2位 | マグロ | 80円 |
3位 | いくら | 70円 |
4位 | カツオ | 65円 |
5位 | はまち | 65円 |
6位 | サーモン | 65円 |
7位 | タイ | 65円 |
8位 | ほたて | 60円 |
9位 | 甘エビ | 60円 |
10位 | コハダ | 50円 |
高級レストランは、原価率35〜45%と高い傾向にあります。食材にこだわった店舗では、A5ランクの和牛や海鮮、トリュフ、キャビアなど、高価な食材を使用するためです。高価な食材は、提供価格が高くても原価率が高くなる傾向にあります。
焼肉店は肉の仕入れ価格が高いものの、席数や回転率向上により原価率は35〜40%程度に収まります。部位によって原価率は大きく差があり、希少部位は原価率が高い傾向にあります。
サイドメニューやタレを自家製にするなど工夫することで、顧客満足度を高めながら原価率のコントロールを図れます。
レストランの原価率は、30〜35%程度が目安です。ファミリーレストランは平均原価率が32%、なかでもコストパフォーマンスの高いサイゼリヤは37%と高めです。
多くの店舗は幅広い層に対応するため、メニュー数が多くなりがちです。そのため、食材の汎用性を高め、ロスを抑える工夫が欠かせません。季節メニューやフェアで旬の食材を活用することも、原価率を維持する有効な手段です。
居酒屋の原価率は、30%〜35%が目安です。提供するメニューによって大きく原価率は変動し、刺身の盛り合わせなど原価の高いメニューは原価率が高い傾向にあります。
ドリンクの原価率は比較的低いため、アルコール類の販売で利益を確保し、看板メニューやフードメニューで集客を図るのが一般的な戦略です。
カフェの原価率も30%〜35%が目安です。コーヒーや紅茶などのドリンクメニューは比較的原価率が低いため、利益を確保しやすい傾向にあります。
サンドイッチやトースト、ナポリタン、オムライス、ケーキなどのフードメニューも原価率はそこまで高くありません。季節限定メニューやケーキセット、ランチセットなどの提供メニューの工夫により、適正な原価率を維持できるでしょう。
中華料理店の原価率は、30%前後です。中華料理は、複数の食材を組み合わせて調理することが多いため、食材の使いまわしや調理技術によって原価率の最適化を図れます。エビチリやフカヒレなど高級食材を使うメニューは、原価率が高くなります。旬の食材を使用し、調理過程での食材や時間の無駄をなくすオペレーションの工夫が大切です。
ラーメンの原価率も同様に30%前後です。一杯あたりの客単価が比較的安定しており、サイドメニューやトッピング、ドリンクで利益率の向上も見込めます。
主要な原価は麺やスープ、チャーシュー、卵、ねぎなどと比較的品目が少なく、仕入れ先の選定も重要です。複数の食材を使ったスープを作る場合、豚骨や鶏ガラ、魚介などを長時間煮込むため、手間と材料費がかかります。
洋菓子店の原価率は、20%〜30%程度で比較的低い水準にあります。ケーキや焼き菓子、チョコレートなどが主な商品であり、小麦粉、卵、砂糖、バター、牛乳などの材料が中心となります。比較的安定した価格で大量に仕入れやすいのが特徴です。
一方で果物やナッツ、洋酒、チョコレートの品種などの素材にこだわると、原価率は上昇します。生クリームを使用する商品は、当日限りの販売となるため、廃棄ロスが原価率に大きく影響します。人気商品と定番商品のバランスを見極めた計画的な製造が、原価率維持のポイントです。
バーの原価率は、およそ15〜25%です。主な収益源がアルコール飲料であるため、ウイスキーやカクテルのベースとなるお酒の仕入れ値が高くても、一杯あたりに換算すると原価率は低くなります。特に、原価率の低いサワーやハイボールなどが多く出るほど、全体の原価率は下がります。
年代物のウイスキーや希少なワイン、フレッシュフルーツを多用するカクテルは、原価率が高くなります。ドライフルーツやチーズのような軽食とセットメニューにするなどの工夫があると良いでしょう。
原価率が上がってしまう要因として、店舗運営や人材の問題などの内部要因と市場や仕入れの変動による外部要因があります。
内部要因としては、以下の5つの項目が原因として挙げられます。
食材管理の不徹底(在庫ロス・期限切れ)
オーバーポーションや調理ミス
メニュー価格の設定ミス
在庫回転率が悪い(死に筋メニューの多さ)
キャンペーンや値引き過多による利益圧迫
食材管理の不徹底は、在庫ロスや期限切れを引き起こし、原価率を大きく悪化させる原因の一つです。例えば、発注量のミスは過剰な在庫を抱える原因となり、期限切れのリスクを高めます。保管場所の温度管理が適切でなければ、食材の鮮度が低下し、廃棄せざるを得なくなる場合もあります。
以下のポイントを意識した、適切な食材管理が必要です。
点検の徹底による在庫管理の最適化
季節に応じた適切な温度管理
発注量の微調整
決められた以上に食材や調味料を使用するオーバーポーションは、原価率が上がる原因になります。特にピーク時には複数のオーダーを同時に調理するため、スピードが求められ、計量がおおざっぱになりがちです。一回の量が少なくてもオーバーポーションの回数が増えると、仕入れ値が増し、収益圧迫の原因になります。
オーバーポーションや調理ミスを防ぐためには、以下のポイントを意識します。
技術指導による調理スキルの標準化
分量を定めたマニュアルの作成
不適切な価格設定も、原価率上昇の原因となります。全メニューの原価率を統一する必要はなく、全体で適正になるような価格設定が必要です。例えば、インパクトのあるメニューや集客力のあるメニューは原価率を高めに設定し、ドリンクやサイドメニューなどは原価率を低めに設定することも一つの手法です。
人気メニューで顧客を呼び込める構造にしつつ、利益を確保できるような仕組みが、原価率のバランスを保つうえで重要になります。
在庫回転率とは、1年間で在庫が何回入れ替わったかを表す数値です。適正な原価率を維持するためには、回転率が高い状態を維持する必要があります。これには、ABC分析などを用いた「死に筋メニュー」の把握が効果的です。売上高や販売個数、利益率などの指標からメニューを分析できます。
在庫が多く注文も少ない死に筋メニューがあれば、改善や新メニュー開発などの対策が必要です。
キャンペーンやフェアを行い、集客をすることは重要な取り組みです。しかし、キャンペーンや過度な値引きは利益圧迫の危険性もあります。特に、原価率の高い商品はキャンペーンや値引きにより赤字になることもあるため、慎重に判断しなければなりません。
原価率の変動には、仕入れ価格の高騰や食材価格の変動などの外的要因も影響します。この項では、原価率が上がる外的要因を見ていきます。
近年、物価高は深刻化しており、飲食店にも大きな影響が及んでいます。仕入れ価格が高いと原価率も連動して高くなるため、仕入先の再検討や交渉が重要です。仕入先が一つに限定している場合、価格交渉がうまくいかないケースもあります。リスクを分散させ、価格交渉をしやすくするために、仕入先を何個か作ることも検討しましょう。
野菜や魚などの食材は、季節によって価格が変動します。さらに、食料の供給不足による価格高騰も起きやすく、仕入れる食材の価格動向を把握することが大切です。農林水産省では、週に1度、野菜や魚、食肉、鶏卵などの食品価格動向調査を実施しています。価格変動に応じて食材やメニューを見直し、臨機応変に対応しましょう。
原価率を適正に保つためには、以下のような具体的な対策が必要です。
仕入先の見直しや価格交渉を行う
旬や安定供給できる食材を活用する
食材ロスを削減する
オーバーポーションを防ぐオペレーションの見直し
利益率の高いメニュー構成に見直す
売れ筋商品に原価を集中させてバランスを取る
FL比率をモニタリングし適正水準を維持する
POSデータなどを活用して原価率を定期的にチェックする
仕入れ段階では、仕入先の検討や仕入れる食材の変更が挙げられます。
まずは、仕入先への価格交渉を検討します。値下げ交渉に応じてもらえると、原価率が大きく下がる可能性があります。既存の仕入先でロットが大きい取引をしている場合、その分仕入単価が安くなるケースが一般的です。価格交渉に応じてもらえないときは、価格と品質のバランスが良い仕入先を開拓してみるのも一つの手です。仕入先を複数に分散させることで価格交渉も優位になり、リスクを分散できます。
旬の食材は、価格が下がりやすく、積極的に使うことで原価率減少に貢献できます。旬の食材を活用した季節限定メニューやフェアを開催して、販促に生かすのも効果的です。
市場や経済動向に応じて価格変動の起きやすい食材は、安定供給にはあまり向きません。輸入食品を多く使っていると、各国の動きに応じて原価率に影響が出るため、メニューや食材の見直しを検討しましょう。
農林水産省では、「食料の安定供給に関するリスク検証(2022)」や、毎週食品価格動向調査を実施しています。市場の動向を把握し、随時対応することが大切です。
調理および提供段階での工夫も、原価率を適正化するうえで欠かせません。調理・提供段階での工夫を、食材ロスとオーバーポーションに分けて解説します。
原価率を抑えるためには、食材ロスを削減することが欠かせません。まずは、どの時点での食材ロスが多いのか現状を把握しましょう。食材ロスとは、仕込み段階での食材廃棄、ポーションロス、売れ残りや注文ミスによる商品ロスなど販売できずに廃棄される食材です。
食材ロスを減らすためには、以下の取り組みを行うと良いでしょう。
食材ロスの現状を把握する
廃棄量や残菜量、食材ロス管理表などを用いて食材ロスの総量を把握する。食品ロス率は、「食品廃棄量÷食品使用量×100」で算出する
在庫・保管管理を徹底する
適正量を把握し発注する・先入れ先出し法を徹底する・食材の鮮度を保つように適切な環境で食材を保管するなど
調理工程を見直す
作業導線を見直す・注文伝票管理を徹底する・オーバーポーションをなくすために計量を怠らない・調理方法を見直すなど
食材を有効活用する
日替わりメニューで余りそうな食材を使い切る・廃棄予定の野菜の皮や芯をスープや別の料理に活用するなど
従業員への教育
調理方法の改善・食材ロスへの意識改革など
盛り付け段階でのロスをなくすためには、オーバーポーションを防ぐオペレーションに変更する必要があります。レシピや調理方法があいまいになっていたり、属人化したりする場合は要注意です。
各レシピには分量をきちんと記載し、分量通りに調理することを徹底しましょう。調味料は使いやすいようにプッシュ式にしたり、仕込み時に小分けにポーション分けしたりと工夫するのもおすすめです。
メニュー設計での工夫も、原価率の維持には必要です。
メニューの具体的な見直しをするために、現状の売上や原価率、調理時間などを見える化してみましょう。各メニューの売上高や原価率、看板商品の利益への貢献度、調理時間は適正かどうかなどを整理します。
人気商品でも利益率が低い場合は、原価見直しや価格改定を行うのが効果的です。利益が出ていても注文数が少ないメニューは、メニュー表やポップの見せ方、商品説明を改善していきます。利益が低く手間もかかっているメニューはメニュー改善をするか、新メニューフェア商品などへ移行するなどの対応が必要です。
ABC分析などを用いて売れ筋商品を把握したら原価率を分析し、食材のグレードを上げたり、調理方法を改良したりして品質を向上させます。多少原価が上がっても、顧客満足度が高まり、結果的に客単価アップやリピート率向上につながります。人気のあまりないメニューは、原価率を低くできるよう見直し、メニュー全体のバランスを保ちます。売れ筋メニューとドリンクや原価の低いメニューを組み合わせたセットメニューの活用も効果的です。
店舗全体では、FL比率の管理やPOSデータを活用した定期的な原価率チェックを行い、問題点を早期に発見し改善していきましょう。
原価率だけでなく、FL比率を適正に保つことも利益確保に欠かせない指標です。FL比率は、食材費(Food cost)と人件費(Labor cost)を合計した費用が、売上高に対して占める割合を指します。
一般的に、FL比率が60%を超えると利益が圧迫されると言われています。原価率が35%の店舗であれば、人件費を25%以下にしなければ利益を出すのは難しいでしょう。
月に一度はFL比率を見直し、目標値よりも高い場合は食材費または人件費の改善が必要です。人件費であれば、シフト管理の最適化や生産性向上に向けた教育、業務効率化などの対策が求められます。
POSデータや売上データ、仕入データなどを活用し、原価率は定期的にチェックしましょう。現状を把握し、問題点の早期発見・迅速な対策が可能になり、原価率の悪化を防げます。特定のメニューや食材で原価率が高騰しているとわかれば、材料の見直しや調理方法の改善を即座に実践できます。
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監修者プロフィール
遠藤 啓成(Endo Hiromasa)
イクシアス株式会社 マーケティング・セールス室 室長。USENにてPOSレジをはじめとするDXサービス全般のマーケティングや事業企画、店舗事業推進部企画課課長として飲食店やホテルの運営にも従事。複雑化する店舗のWEB集客課題を解決したいという強い思いからイクシアスに参画。フリーランスの美容師としても活動中。管理美容師、化粧品検定1級、食品衛生管理責任者、防火防災管理者、ITパスポートを保有。USEN時代には、優れた業績を評価されGOODJOB賞を受賞。
