
2025年上半期(1月~6月)に発生した飲食店の倒産件数は、過去最多の458件に達しました(帝国データバンク調べ)。物価高による食材費や人件費、家賃の上昇で、多くの飲食店が「売上はあるのに利益が残らない」という課題を抱えています。
黒字を安定させる鍵は、売上規模より利益率です。この記事では、飲食店の利益(粗利/営業/純利益)の基礎、目安、主要指標(FL比率・損益分岐点・人時売上)と、今日から実行できる改善策を実例つきで解説します。
※■POINT※
・目標の営業利益率は10%前後(店の形態や立地で変動)
・FL比率は60%以下が目安。固定費を30%程度に抑えれば、営業利益10%が見える。
・指標はセットで管理(FL/損益分岐点/人時売上)。単独の数値だけでは誤診しやすい。

飲食店経営において「利益」を正しく理解することは、売上を伸ばす以上に重要です。単純に売上が多くても、原価や固定費がかさめば赤字になる場合があります。
飲食店経営者が把握すべき、以下6つの利益に関する用語を整理します。
粗利(売上総利益)
粗利率(売上総利益率)
営業利益
営業利益率
純利益
純利益率
粗利とは、売上から食材や飲料などの原価を差し引いた利益です。飲食店では「料理を出した分だけ残る利益」を示し、日々の仕入れが適切かどうかを判断する基礎となります。
計算式
粗利 = 売上高 - 原価
例
売上高1,000万円、原価300万円の場合:粗利は700万円になります。
粗利を把握することで、「仕入れコストが高すぎないか」「売価設定が適切か」を確認できます。
粗利率とは、売上のうち粗利が占める割合を示します。 「原価率」と並んで、飲食店経営の健全性を判断する重要な指標です。
計算式
粗利率 = 粗利 ÷ 売上高 × 100(%)
例
粗利700万円 ÷ 売上高1,000万円 ×100 = 70%
一般的な飲食店では粗利率は60〜70%程度が目安です。これを下回る場合、仕入れや価格設定を見直す必要があります。
営業利益は、粗利から人件費・家賃・水道光熱費など、店舗運営にかかる費用を差し引いたものです。
計算式
営業利益 = 粗利 - 販売費および一般管理費
例
粗利700万円 - 運営コスト500万円 = 営業利益200万円
営業利益は「本業でどれだけ稼げているか」を示すため、資金繰りや将来の投資判断の基準となります。
営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合です。
計算式
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100(%)
例
営業利益200万円 ÷ 売上高1,000万円 ×100 = 20%
営業利益率は、粗利率よりも「人件費や家賃など固定費の重さ」を反映します。効率的な店舗運営ができているかを判断する重要な指標です。
純利益は、営業利益から税金や借入金の利息を差し引いた最終的な利益です。手元に残る現金とほぼイコールであり、経営の健全性を測る上で最も重視されます。
計算式
純利益 = 営業利益 - 税金・利息など
例
営業利益200万円 - 税金100万円 = 純利益100万円
個人経営の飲食店にかかる、代表的な税金は以下のとおりです。
消費税
所得税・住民税
個人事業税
固定資産税(物件所有時)
印紙税
復興特別所得税
純利益率は、売上高に対する純利益の割合です。
計算式
純利益率 = 純利益 ÷ 売上高 × 100(%)
例
純利益100万円 ÷ 売上高1,000万円 ×100 = 10%
税金や利息、特別損益を含めた「最終的な利益率」であるため、営業利益率よりも低くなるのが一般的です。
飲食店の経営を安定させるには、利益率を正しく把握し、固定費や変動費といったコスト構造を明確にすることが欠かせません。利益率を考えるうえで特に重要となる6つのポイントを整理します。
飲食店が目指すべき利益率の目安
固定費の基本と具体例
変動費の基本と具体例
損益分岐点とは
FL比率とは
利益率低下の主な原因
金融庁「業種別支援の着眼点 飲食業」によると、飲食業の理想的な営業利益率は10%前後とされています。内訳は以下のとおりです。
FL比率(材料費+人件費):60%
その他経費(水道光熱費、家賃、広告宣伝費など):30%
営業利益:10%
このバランスを保てていれば、黒字経営の目安をクリアしていると考えられます。
一方で、総務省の調査によると、飲食サービス業の平均営業利益率は約9.6%です。小規模飲食店では赤字に陥るケースも多いため、「FL比率60%以下」を守れるかどうかが、店舗の存続に直結します。
固定費とは、売上に関わらず毎月必ず発生するコストです。代表的なものは以下のとおりです。
家賃
人件費(固定的に支払う給与部分)
水道光熱費(基本料金部分)
減価償却費
リース料
広告宣伝費
人件費の目安は売上高の30%、その他の固定費は30%程度が適正とされています。固定費を抑えることで、黒字化に必要な売上高(損益分岐点)を下げ、経営の安定につながります。例えば家賃を20万円から18万円に交渉できれば、2万円の削減効果がそのまま利益に直結します。
基本料金は契約容量・地域・メニューで変動します。具体額は毎年改定があるため、最新の料金表で確認し、契約A/40A→30Aなど適正容量化をまず検討しましょう。
電気の基本料金(従量電灯Bの場合)※2025年8月現在
契約種別 | 基本料金 |
30A | 935円25銭 |
40A | 1247円00銭 |
50A | 1558円75銭 |
60A | 1870円50銭 |
変動費とは、売上に応じて増減するコストです。代表的なものは以下です。
食材費(仕入れ費用)
仕入れに伴う運送費
包装資材など消耗品
金融庁の指標では、売上高の30%が適正とされています。
変動費は売上減少に合わせて縮小するため固定費よりリスクは低いですが、材料費の削減は限界利益率の改善につながり、店舗の「稼ぐ力」を高める要因となります。
ただし、仕入れ先に過度な値下げ交渉をすると信頼関係を損ない、逆に仕入れ価格が上がるリスクもあります。安さだけで選ぶと、品質が落ちて客離れにつながる点も忘れてはいけません。
損益分岐点とは、売上高と費用が同額になり「利益がゼロ」になるラインのことです。計算式は以下のとおりです。
損益分岐点(売上高)=固定費÷(1-変動費率)
※変動費率=変動費÷販売価格
例:ラーメン屋の場合
固定費:90万円
販売価格:1000円
変動費:400円
変動費率=400円÷1000円=0.4
損益分岐点(売上高)=90万円÷(1-0.4)=150万円
つまり「月150万円の売上」を超えなければ赤字ということになります。
さらに販売数で見る場合は、固定費を限界利益(販売価格-変動費)で割って算出します。
限界利益=1000円-400円=600円
損益分岐点販売量=90万円÷600円=1500杯
「毎月1500杯を売ること」が黒字化の最低条件になります。
FL比率とは「Food(食材費)」と「Labor(人件費)」の合計が、売上高に占める割合のことです。
FL比率=(食材費+人件費)÷売上高
理想は60%以下とされています。
例えば、月商150万円の中華料理店で食材費70万円、人件費50万円の場合は、以下のようになります。
FLコスト=120万円
FL比率=120万円÷150万円=80%
この場合、FL比率だけで売上の80%を消費しており、家賃や光熱費を加えると赤字になります。
逆に、FL比率を60%に抑えられれば、その他経費を30%かけても10%の利益を残すことが可能です。
飲食店の利益率が下がる主な原因は、主に以下の3点になります。
原価高騰:仕入れ価格や光熱費の上昇で粗利率が圧迫される
人件費増:最低賃金上昇や人手不足で固定費負担が拡大する
客単価減:低価格メニュー比率や過度な値引きで売上効率が悪化する
「なぜ利益が出ないのか」をこの3点に当てはめて分析すれば、改善すべき課題が見えやすくなります。
特に人件費や原価の上昇は業界全体の共通課題のため、客単価アップや高粗利商品の強化などでバランスを取ることが重要です。

飲食店の利益率を改善する方法は、大きく「売上を伸ばす」「費用を抑える」の2つに分けられます。それぞれのアプローチについて、以下で見ていきましょう。
食材費は変動費の中でも大きな割合を占めるため、仕入れコストの見直しは最優先課題です。
大ロット発注で単価を下げる
仕入れ先を複数確保し、条件を比較検討する
季節や相場に応じてメニューを調整する
例えば、原価40万円・運営コスト50万円・売上100万円の店舗では営業利益率10%ですが、原価を30万円に抑えられれば利益率は20%に倍増します。ただし過度な値下げ交渉は、仕入れ先との関係悪化につながるため、信頼関係を維持しつつ、無理のないコスト削減を目指すことが重要です。
販売価格の見直しは売上改善に直結します。販売価格1,000円・原価300円であれば粗利率70%ですが、価格を1200円に変更すると粗利率は75%に向上します。
ただし「値上げしても客数が減らない」ことが前提です。無計画に価格を上げれば、リピート率低下や客離れにつながります。実践のポイントは以下のとおりです。
人気メニューを軸に小幅な値上げを行う
セット化や限定感を出して顧客に納得感を与える
品数を絞り、仕入れや在庫回転率を改善する
売れる商品に集中することで、客単価を維持しながら利益を上げることができます。
食材廃棄や欠品は利益率を大きく圧迫します。例えば、仕入れ値40万円・売上100万円で10万円を廃棄すると、原価率は40%ではなく実質50%に跳ね上がります。
リスクを避けるためには、以下の取り組みが有効です。
週単位・日単位の棚卸しで在庫を見える化する
POSデータや天候データを活用して需要予測する
廃棄しやすい食材をメニュー設計で使い切る
在庫が多すぎれば廃棄リスク、少なすぎれば欠品による機会損失につながるため、「適正在庫」の維持が利益改善のカギです。
人件費は売上高の約30%前後を占め、利益率を左右する大きな要因です。無駄なシフトを減らし、人件費効率を高めることが重要です。
人件費効率を測る指標が「人時売上高(従業員1人が1時間で生み出す売上)」です。一般的な目安は以下のとおりです。
理想:5,000円以上
平均:3,000~4,000円
例えば、1時間あたりの売上が2万円なら従業員4人が適正です。アイドルタイムは人員を絞り、ピーク時は必要人数を確保することで「人件費を削減しつつ、売上機会を逃さない」運営が可能になります。
原価率が低く利益率の高い商品(ドリンク・トッピングなど)を強化することで、全体の収益性を底上げできます。
メニュー表で目立つ位置に配置する
写真やPOPを活用して注文を促す
限定商品やセット化で販売機会を増やす
一方で、原価が高い目玉商品は集客力はあるものの利益が薄いため、集客商品と利益商品を組み合わせる戦略が効果的です。
セット販売やアップセルは客単価を上げる最もシンプルな手法です。
セット例:ドリンク単品250円→セットなら100円で追加できると提示
アップセル例:「プラス150円でチーズトッピングはいかがですか?」と促す
接客トークや注文画面で提示すれば、顧客は自然と選びやすくなります。POSやデジタルメニューを活用すれば、従業員の提案力に依存せず安定的に客単価を高められます。
利益率を改善するためには、原価管理や人件費の最適化だけでなく、「新規顧客を獲得し、リピーターを増やす仕組み作り」が欠かせません。
そのときに大きなカギとなるのが、口コミや店舗情報の管理です。実際、消費者庁の調査では「来店時に口コミを参考にする」と答えた人は38.2%に上ります。
一方で、Googleビジネスプロフィールや食べログ、SNSなど複数媒体に店舗情報を掲載していると、更新作業や口コミ対応に多くの時間を取られてしまうのが実情です。
イクシアス株式会社が提供する「STOREPAD」は、こうした煩雑な作業を一元管理できるDX支援ツールです。
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監修者プロフィール
遠藤 啓成(Endo Hiromasa)
イクシアス株式会社 マーケティング・セールス室 室長。USENにてPOSレジをはじめとするDXサービス全般のマーケティングや事業企画、店舗事業推進部企画課課長として飲食店やホテルの運営にも従事。複雑化する店舗のWEB集客課題を解決したいという強い思いからイクシアスに参画。フリーランスの美容師としても活動中。管理美容師、化粧品検定1級、食品衛生管理責任者、防火防災管理者、ITパスポートを保有。USEN時代には、優れた業績を評価されGOODJOB賞を受賞。
