
店舗の売上が伸び悩むとき、その原因を「集客不足」と捉えてしまいがちです。しかし実際には、来店率のどこでつまずいているのかを分解できていないことが、改善を難しくしているケースが多くあります。
来店率は一つの数字に見えて、
店舗前を通った人が入店する割合(入店率)
一度来店した顧客が再び来店する割合(リピート率)
という、性質の異なる要素で構成されています。この2つを同じ施策で改善しようとすると、打ち手が噛み合いません。
本記事では、来店率を構造的に分解したうえで、入店率とリピート率それぞれに対して、何を計測し、どこを改善すべきかを整理します。
※POINT※
店頭での入店率向上に加え、リピーター育成を含めた施策が不可欠
一元管理ツールで業務負担を減らし、効率化を図ることが大切

来店率は、「店に入る確率(入店率)」と「もう一度来る確率(再来店率)」で決まります。
改善策を打つ前に、どちらが落ちているのかを分けて考えることが前提です。また、来店率の改善は「いつ打つか」で成果が変わります。効果が出やすいタイミングは、主に次の3つです。
平均来店周期が過ぎる前
顧客が「そろそろ行こうかな」と思い始める時期に、パーソナライズされたアプローチをすることで、自然な流れで再来店を促せます。特に、飲食店やサロンなどで有効です。来店周期が大幅に過ぎてしまうと、顧客から忘れられている可能性が高まります。「忘れる前」や「そろそろ気になりはじめる頃」のアプローチを心がけましょう。
閑散期(ニッパチ・二八)の前
ニッパチとは、主に小売業や飲食業において2月と8月の売上が低迷する現象です。
2月は年末年始の出費後で消費者の財布の紐が固くなることや、寒さで外出・消費が減る傾向にあります。8月は厳しい暑さや盆休みによる帰省・旅行で、都市部から人々が離れがちです。
直前に動くより、手前で限定メニューや小さなキャンペーンを仕込んだほうが、下振れを抑えやすくなります。
イベントや季節の変わり目になる前
季節の変わり目は、生活リズムや気分の変化により、購買意欲も高まる時期です。新しいものや、季節に合ったものを求めて来店する動機が強まるため、その時期限定の商品を先取りしたプロモーションは効果的です。
入店率(来店率)は、店舗の前を通った人のうち実際に入店した人の割合を示す指標です。店舗の外観的な魅力や、入りやすさを測る目安となります。
計算式
入店率(来店率)= 来店客数 ÷ 店舗前通行人数
入店率は以下のような原因で下がります。
店内の様子が見えない
暗い/清潔感がない
入口が分かりにくい
閉鎖的で入りづらい印象がある
メニューや価格が見えず不安が残る
通行客層と店のコンセプトが合っていない
近隣に強い競合がある
再来店率(リピート率)は、一度来店した顧客が再び来店する割合を示す指標です。顧客満足度や、定着率を測る目安となります。
再来店に関する指標には、主に以下の2つの計算式が用いられます。
再来店率(リピート率)= 月間リピート人数 ÷ 累計新規顧客数 × 100
再来店顧客(リピーター率)= 月間リピート人数 ÷ 月間総顧客数 × 100
再来店率が落ちる主な要因は次のとおりです。
実際の商品・サービスが顧客の期待を下回った
再来店を促す仕組みがない
顧客が店舗のことを忘れている
顧客が競合他社に乗り換えた
2回行くべき理由や決め手がない
再来店率が低下する「前触れ」にも気をつけましょう。具体的には「新規顧客の比率が異常に高い」「クーポン配布時にしか来店しない」「口コミで悪い評価が増えた」などの状況です。
入店率と再来店率は、状況に応じて優先順位が変わります。目安は次のとおりです。
入店率を優先すべきケース
新規オープン直後で知名度が低い
繁忙期前に新規顧客を増やしておきたい
そもそも商品やサービスが知られていない
通行量はあるのに入店につながっていない
再来店率を優先するケース
新規獲得コストが高い
リピート率が低迷している
競合他社への乗り換えが目立つ
安定した収益基盤を構築したい
基本は「入店率で入口を広げ、再来店率で売上を固める」流れです。ただし、利益を安定させる観点では、再来店率の改善が優先になるケースが多いです。
店舗経営における「計測設計」とは、必要なデータを定義し、それを「誰が・いつ・何を・どのように・どの頻度で」計測するかを事前に計画するプロセスを指します。感覚や経験に頼るのではなく、データドリブンな経営をするための基盤となります。
計測設計では、次の3点を整理します。
何を測るか(データ)
何を指標にするか(KPI)
どう比較するか(期間・切り口)
店舗の種類にかかわらず、主に以下のデータを組み合わせて、売上や来店率の現状を分析します。
店舗前通行客数(通行量):店舗の前を通った人の数(時間帯・曜日・天気別)
入店客数(来店客数):実際に店に入った人の数(時間帯・曜日別)
入店率(来店率):通行客数のうち、実際に入店した人の割合を(通行客数÷来店客数)
滞在時間・店内導線:顧客が店内のどの場所にどれくらい滞在したか
属性データ:来店した年齢層や性別
購入率:実際に商品やサービスの購入に至った人の割合
Web・SNS上の行動データ:Googleマップ(ローカルSEO・MEO)閲覧数、Web広告クリック数、クーポン利用数など
KPIは多すぎると判断が鈍ります。3〜5指標に絞り、「どこを触れば数字が動くか」が分かる状態を作ります。
来店率改善で使いやすいKPIは次の5つです。
入店率
評価対象:集客施策の効果、店舗への入りやすさ
改善アクション:外観やディスプレイの見直し
再来店率(リピート率)
評価対象:顧客満足度、ファンの定着度
改善アクション:公式アプリの活用や会員登録の促進
客単価
評価対象:商品力・接客力
改善アクション:セット販売(クロスセル)や上位商品(アップセル)の提案供強化
粗利
評価対象:商材の収益性・値決めの適切さ
改善アクション:メニュー改定や仕入れ原価の見直し
広告費
評価対象:販促効果・新規顧客獲得コスト
改善アクション:広告費用対効果の管理、Web集客の効率化
施策が成功したかどうかを判断するために、主に以下の期間や切り口を軸にして比較を行います。
直近比較(今週/前週)
目的:直前までの施策が短期的に効果を発揮しているか
比較ポイント:入店後の行動、通行量と入店客数の割合、繁忙な時間帯の変化
前年差比較(今年/前年)
目的:繁忙期・閑散期を考えたうえで施策の改善は必要かどうかを判断
比較ポイント:時間と曜日の分析、来店の動機など
施策別・エリア別比較
目的:広告媒体の違いや地域特性を考慮し、効果的な施策が行われているかを検証
比較ポイント:各媒体の反響、顧客の滞在時間、来訪目的、競合店の多さ
必要に応じて、AIカメラ、赤外線センサー、POSなどを使うと、計測精度と改善スピードが上がります。
来店率を正確に把握し、改善に取り組むことで、「どこを直せば売上につながるのか」を感覚ではなく数字で判断できるようになります。その結果、無駄な施策を減らし、限られた予算や人手を効果的に使えるようになります。
来店率の計測・改善によって得られる主なメリットは、次の3つです。
来店率の変化を見ることで、「どの外観・ディスプレイが通行人の足を止めたのか」を把握できます。ディスプレイ変更の前後で来店率を比較すれば、見た目の良し悪しを感覚ではなく数字で判断できます。その結果、次のような改善が可能になります。
顧客の関心を引いた打ち出し内容が分かる
店内の雰囲気や入りやすさを調整できる
効果の薄い装飾やPOPを減らせる
「なんとなく変える」状態から、「効いた変更だけを残す」運用へ移行できます。
来店率を計測すると、チラシやWeb広告が実際の来店にどの程度貢献したかを把握できます。
広告接触と来店行動を紐づけることで、次の判断が可能になります。
どの広告媒体が来店につながっているか
費用に見合った効果が出ているか
続けるべき施策と止めるべき施策の切り分け
広告費を「出した分だけ不安になるコスト」ではなく、「調整できる投資」として扱えるようになります。
ショーウィンドウや店頭のディスプレイと連動して来店率を分析すると、顧客の目を引いた商品や購買意欲を高めるレイアウトの傾向を把握できます。
また店舗の魅力度を向上させたり、品揃えの見直しや最適化につなげたりすることもできます。より来店しやすい店舗へと進化させるために、「商品の分析」は不可欠な視点となります。期待できるメリットは以下のとおりです。
目を引く商品や構成を把握できる
販促や陳列の効果を検証できる
想定していた顧客層とのズレに気づける
結果として、品揃えや見せ方を「売れた後」ではなく、「来店前」の段階から最適化できるようになります。

入店率の改善は、やみくもに施策を増やしても成果につながりません。重要なのは、「どの段階で入店をためらっているのか」を分解し、それぞれに対して打ち手を用意することです。
入店率を高めるために、特に意識すべきポイントは次の3つです。
通行人は、立ち止まらなければ入店しません。まずは「気になる」「中を見てみたい」と思わせるきっかけを作る必要があります。
ディスプレイ(VMD)で演出する
VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)は、店舗や商品のコンセプトを視覚的に表現するマーケティングの一つです。店前に情報が何もない状態では、通行人は判断できず、そのまま通り過ぎてしまいます。
たとえば次のような工夫が有効です。
・飲食店:メニュー、価格帯、食品サンプル、写真
・物販店:マネキン、主力商品、季節感のある演出
「ここは何の店か」「自分に関係がありそうか」が一瞬で伝わるだけで、入店の心理的ハードルは下がります。
安心・歓迎を「見える化」する
店内の様子や価格帯が外からわからないと、顧客は不安を感じます。
その不安を、外から見て解消できる状態を作りましょう。
・店内の様子が分かるガラス面
・明るく、温かみのある照明
・「仕事帰りに」「一人でも入りやすい」といった具体的なPOP
「自分が入っても浮かないか」が想像できるかどうかが、入店判断を左右します。
入店をためらう理由は、店前だけにあるとは限りません。来店前に調べた情報が不十分だと、不安が勝って入店に至らないケースも多くあります。最低限、次の情報は明確にしておく必要があります。
営業時間、定休日
料金の目安
予約の要否
決済方法
加えて、SNSやWebサイトで以下の情報を発信できると、安心感が高まります。
店内の雰囲気が分かる写真
料理や商品の実物イメージ
利用シーンの提案
注意したいのは、情報の不一致です。Webサイト、SNS、Googleマップで内容が食い違っていると、かえって不信感を与えます。すべての媒体で、同じ情報が表示されている状態を維持しましょう。
実店舗を探す多くのユーザーは、Googleマップを起点に比較検討しています。そのため、Googleビジネスプロフィールの整備は入店率に直結します。上位表示だけでなく、「この店なら安心して行けそう」と思わせる情報量が重要です。
写真は、ユーザーにとって最も判断材料になりやすい情報です。
外観
内観
料理や商品
スタッフや接客の雰囲気
定期的に更新することで、営業実態のある店舗として認識されやすくなります。
口コミについては、数だけでなく対応も見られています。
良い口コミには感謝を伝える
低評価には事実を確認し、冷静に対応する
放置せずに向き合う姿勢そのものが、信頼につながります。
再来店率を改善するには、「また来てください」とお願いするだけでは不十分です。一度来店した顧客が再び足を運ばない理由は、満足していないからではなく、理由も期限もなく、忘れてしまうからというケースが大半です。
再来店を促すために押さえるべきポイントは、次の3つです。
再来店率を高めるうえで最も重要なのは、「なぜ、いつ来るのか」をその場で明確にすることです。満足して帰った顧客であっても、次回来店の理由が曖昧なままでは行動に移りません。
たとえば次のような設計が有効です。ポイントは、「お得だから来る」ではなく、「今来る意味がある」と理解してもらうことです。
ヘアサロン
「この状態を維持するなら、○ヶ月後がベストです」と専門的な理由を伝える
飲食店
「○月中に来店すると限定メニューが出ます」と期限付きの来店理由を提示する
再来店を後押しする要素としては、次のような体験が効果的です。
前回の内容を踏まえたパーソナライズされた提案
来店回数に応じて価値が積み上がる仕組み(スタンプ、会員特典)
退店後すぐのフォローメッセージと期限付きの再来店導線
動機と期限をセットで伝えることで、「行こうと思っていたが行かなかった」を防げます。
再来店率が伸びない店舗の多くは、顧客と再接触する手段を持っていない、または使えていません。来店後に何の接点もなければ、時間の経過とともに忘れられてしまいます。
代表的な連絡手段には、以下があります。
LINE公式アカウント
登録の心理的ハードルが低く、リマインドや個別対応に向いている
メールマガジン
予約確認、来店周期に合わせた案内に活用できる
店舗アプリ
ポイントや会員ランクと連動し、継続利用を促しやすい
重要なのは、「持つこと」ではなく「使うタイミング」です。
平均来店周期の少し前
季節やイベントの切り替わり
前回来店から一定期間が経過したタイミング
こうした節目で自然に接触できる状態を作ることが、再来店率の安定につながります。
再来店施策で安易に値引きを使うと、「安いときだけ来る顧客」が増え、利益と関係性の両方を削る結果になりがちです。目指すべきは、「安いから来る」ではなく「ここに来たいから来る」状態です。
値引き以外で検討したい特典の方向性は次のとおりです。
体験:限定メニュー、先行体験、特別サービス
優越感:会員限定、常連向け案内、優先予約
利便性:予約のしやすさ、待ち時間の短縮
関係性:名前を覚えてもらえる、前回内容を踏まえた提案
こうした価値を積み重ねることで、価格競争に巻き込まれにくいリピーターが育ちます。
来店率は、日々一定の数値で推移するものではありません。季節、曜日、時間帯、競合状況など、複数の要因が重なって変動します。重要なのは、「下がった/上がった」という結果そのものではなく、どの要因で動いたのかを切り分けて見ることです。
来店率の変動要因は、大きく次の3つに整理できます。
来店率は、立地そのものではなく「そのエリアにいる人と、店舗が提供している価値が噛み合っているか」で決まります。代表的な考え方は以下のとおりです。
住宅街エリア
・日常利用が前提
・営業時間・利便性・安心感が重視される
・リピートが積み上がりやすい一方、派手な施策は効きにくい
オフィス街・商業地エリア
・昼間人口が多く、時間帯依存が強い
・平日は高来店率、土日祝は落ちやすい
・回転率とピーク対応が来店率に直結する
年齢・世帯構成
・ファミリー層:まとめ買い・滞在前提
・単身層:即時性・手軽さ重視
人口動態
・人口増加エリアか、縮小エリアか
・短期施策ではなく、中長期の来店率設計に影響する
来店率が伸びない場合、「施策の問題」ではなく「エリアとの不一致」が原因のことも多い点に注意が必要です。
来店率は、外的な施策によって意図的に動かせる数値でもあります。ただし、施策ごとに「動き方」が異なります。
クーポン・割引施策
・即効性は高いが、施策終了後に反動が出やすい
季節・限定イベント
・来店理由が明確になり、納得感のある来店を生みやすい
DM・メルマガ・SNS
・タイミング次第で来店に直結する
購買履歴に基づくアプローチ
・再現性が高く、再来店率とも連動しやすい
重要なのは、「来店率が上がった理由を記録しておくこと」です。理由が分からない数字の上昇は、次に活かせません。
顧客の生活リズムと来店率は連動していると考えるのが自然です。曜日や時間帯によっても来店目的や購買行動は大きく異なります。
平日
仕事・家事の合間を縫いながら、実用性の高い機能的価値を購入する人が中心です。週末に比べて来店率は低い傾向にあります。
土日祝
余暇が多く、買い物を楽しむなど自分のための「情緒的価値」を購入する傾向があります。支出額は平日と比べて高くなり、特に土曜日は来店率の高さから混雑する可能性も高くなります。
朝・午前(9時~12時)
シニア層や早朝出勤の人が多く、一日のパフォーマンスを重視して買い物をします。来店率は比較的緩やかですが、ドラッグストアやコンビニなど利便性の高い店舗はレジが混雑するケースも多々あります。
昼(12時~14時)
近隣で仕事をしている人や、昼食目的の人たちが来店します。短時間の滞在で効率的に食事を済ませたい人が多く、店側には高い回転率での運営が求められます。
午後・夕方(15時~18時)
主婦、放課後の学生、仕事帰りの会社員が多く訪れます。主な目的は夕食の買い出しで、一日のなかで最も店内が混雑する時間帯です。
夜(18時~21時)
客層は仕事帰りの会社員、夕食を作る時間のない単身者、家族連れが中心です。お惣菜やお弁当のほかにも、スイーツやアイスなどのデザート類が多く売れる傾向にあります。
深夜(22時~24時)
アイドルタイムが過ぎているため一日全体での来店率は低いものの、深夜に活動する習慣がある人、残業帰りの人、緊急を要する人など特定の需要がある時間帯です。
また飲み会や締めの食事のために利用する層もおり、「〆パフェ」など深夜のみ営業している店舗もあります。
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監修者プロフィール
遠藤 啓成(Endo Hiromasa)
イクシアス株式会社 マーケティング・セールス室 室長。USENにてPOSレジをはじめとするDXサービス全般のマーケティングや事業企画、店舗事業推進部企画課課長として飲食店やホテルの運営にも従事。複雑化する店舗のWEB集客課題を解決したいという強い思いからイクシアスに参画。フリーランスの美容師としても活動中。管理美容師、化粧品検定1級、食品衛生管理責任者、防火防災管理者、ITパスポートを保有。USEN時代には、優れた業績を評価されGOODJOB賞を受賞。
