
消費者庁「令和4年度消費者意識基本調査」によると、消費者全体の45.1%が費用対効果(コストパフォーマンス)を重視していることが明らかになりました。
しかし、飲食店においてすべての商品で「コスパの良さ」を追求すると、利益が出にくくなり、店舗経営を圧迫します。持続的な運営には、適切な原価率のコントロールが欠かせません。
本記事では、飲食店における原価率の基本知識から、業態別の目安、適正化のための実践ポイントを解説します。
※■POINT※
・原価率は一般的に30%前後が目安
・収益の最適化には、ロス率や歩留まりといった、ほかの要素も考慮する

はじめに、「原価」や「原価率」といった言葉の意味や計算方法など、飲食店における原価率の基礎知識について確認しましょう。
「原価」は、食材の仕入れコストを指す言葉です。例えばサンドイッチであれば、パン・野菜・ハムといった食材の仕入れにかかる金額の合計が原価となります。
この原価の売上に占める割合が「原価率」です。例えば、売上100円で原価50円の場合、原価率は50%になります。
原価率の平均は業界によって異なりますが、金融庁が公開した「業種別支援の着眼点 飲食店」によると、飲食店の原価率の平均は30%前後です。
原価率は、以下の計算式によって算出します。
原価率=原価÷販売価格×100
例えば、800円の定食にかかる食材の仕入れコストが320円なら、原価率は40%です。
原価率(40%)= 原価(320円)÷ 販売価格(800円) × 100
原価率が高ければ、収益は少なくなります。収益を上げるためには、一定以下の原価率に抑えることが必要です。
原価率を考えるうえでは、売上全体と照らし合わせた分析が重要です。先述のとおり、飲食店の原価率の平均は30%ですが、全ての商品が原価率30%である必要はありません。
ハンバーガー店を例に取ってみましょう。
ハンバーガー:販売価格250円、原価100円、原価率40%
オレンジジュース:販売価格100円、原価20円、原価率20%
ハンバーガー単品では原価率40%、オレンジジュースでは20%ですが、両方を合わせると、原価率は30%になります。
商品単位の原価率は、個別メニューの採算性を表す数字です。原価率と利益率の関係を考える際には、店舗全体を見渡す必要があります。
続いて、原価率についての基本的な考え方を見ていきます。
販売価格の見直しや、仕入れコストの削減などで原価率は下げられます。しかし、原価率は「低いほど良い」わけではありません。
たしかに、原価率を下げると利益率は上がります。一方で原価率を優先し過ぎると、顧客にとっての魅力が薄れる原因や、料理のクオリティ低下を招く原因になるのも事実です。
また、原価率はあくまで販売価格に占める仕入れ値の割合であり、そのまま収益に結び付くわけではありません。ほかの要素を考慮しながら、トータルで考える必要があります。
店舗の収益を増やすためには、原価率とともに以下の要素を考慮しましょう。
ロス率
仕入れミスや調理ミスで廃棄することになった食材費の割合です。例えば売上月200万円の店舗で、10万円のロスが出た場合、ロス率は5%になります。
ロス率(5%)=廃棄した食材の金額(10万円)÷ 売上高(200万円)× 100
FL率
FL率は、Food(食材費)とLabor(人件費)が占めるコストの割合です。売上月160万円の店舗の食材費(原価)が60万円、人件費が40万円の場合はFL率62.5%になります。
FL率(62.5%)= 食材費(60万円)+ 人件費(40万円)÷ 売上高(160万円)× 100
FL率の考えをもとに、食材費(原価率)が高くても、人件費を抑えられれば商売が成立する、という説明ができます。
歩留まり
食材のうち、完成品に利用できる部分の割合です。例えば、仕入れた野菜を葉や根の部分まで全て使えば、歩留まりは100%になります。
原価率が高いメニューには、以下のような特徴があります。
高級食材や希少部位のメニュー
キャビアや松茸などの高級食材や、シャトーブリアンのような希少部位は、食材自体の価値が高いため、原価率が高くなりがちです。
消費期限の短い食材の料理
消費期限が短いと廃棄が発生しやすくなるため、慎重に扱う必要があります。鮮魚や精肉 といった生ものやお惣菜、ケーキなどが代表例です。
リーズナブルな販売価格の料理
原価が安くても、提供価格も安ければ、原価率は相対的に上がります。例えば、原価1,000円のハンバーガーを2,000円で販売するのであれば、原価率は50%です。
原価率の高いメニューは顧客にとって魅力的なものも多く、目当てに来店するなどの集客効果が期待できます。
一方で、利益にはつながりにくいため、目玉商品やセットとして提供する工夫が必要です。
安価で手に入る食材、調理に手間のかからない料理は、原価率を低く抑えられます。
フライドポテトや冷ややっこ、かき氷などがその一例です。
フライドポテトに、じゃがいも2個(約200g)分を使っていたとしましょう。じゃがいもの平均相場163円/キロなので、原価はおよそ32.6円になります。これを250円で提供すれば、原価率は13%です。
参考:農林水産省「青果の市場価格を簡単に調べられるサービス アグリネ」
ここに油代が加わったとしても、原価率の低いメニューとして成立します。
一方で、原価率の低いメニューは主力商品になりにくく、原価率の高い看板商品とうまく組み合わせて売り出す必要があります。

ここからは、いくつかの業態に分類したうえで原価率の目安を見ていきます。金融庁の資料では「平均30%前後」とされている飲食店の原価率ですが、業態によってその目安は異なります。
以下の5パターンについて解説します。
カフェ・喫茶店(チェーン/個人店)
レストラン(高級店/大衆向け)
ラーメン店(駅前立地/郊外型)
居酒屋・バー(均一価格系/割烹居酒屋)
デリバリー・テイクアウト業態
ドリンク類の提供がメインとなるため、原価率だけで言えば抑えやすい業態です。1キログラム3,000円で仕入れた豆で100杯のコーヒーを提供できるとすると、コーヒー1杯の原価は30円となります。これを300円で販売するのであれば、原価率は10%です。
一方で食事の提供にも力を入れている場合、ケーキをはじめとするデザート類は原価が高くなる傾向にあります。加えてカフェ・喫茶店には「くつろぐ空間」「ゆったり過ごす空間」として利用する長時間滞在の顧客も多く、回転率も考慮した運営が必要です。
カフェ・喫茶店の原価率を考える際には、以下のポイントを意識します。
回転率の高い店舗なら、原価率が30%を超える食事メニューも比較的出しやすい
高級志向のコンセプト設計であれば、価格設定を高めにして原価率を抑える
高級食材を扱うレストランの場合、原価が高いことに加え、調理にも一定の時間がかかるため、原価・人件費ともにかさみやすい傾向があります。原価率を抑えられるドリンク類とのセット提供など、メリハリのある店舗運営が重要です。
また、高級店と大衆向けの店舗では、「ゆっくりと食事を楽しむ場所かどうか」という回転率の違いも理解しましょう。レストランの原価率を考える際には、以下のポイントを意識します。
原価率は30%以下を目指し、接客などサービスの質向上に努める
主力メニューは原価率の低いサイドメニューとセットで提供しバランスを取る
ラーメン店は、立地によって人件費が変動しやすい点が特徴です。駅前立地の場合はカウンター中心の小規模店舗が多いため、人件費を抑えやすい傾向があります。一方、テーブル席も充実させた郊外型の店舗であれば、人件費を加味しながら原価率とのバランスを考えます。
なお、一杯のラーメンの原価率は一般的に30%程度とされますが、スープやトッピングに注力すると原価率も上昇します。鶏ガラや豚骨といった単一の食材でスープを作るよりも、複数の食材を組み合わせると原価が高くなる、というのがその一例です。
ラーメン店の原価率を考える際には、以下のポイントを意識します。
カウンター中心の小規模店舗なら、食材にこだわったラーメンも提供しやすい
サイドメニュー(チャーハンなど)の原価を抑え、収益性を確保する
「飲み放題」など、均一の価格で酒類を提供する大衆居酒屋は、品数の豊富さや夜間営業メインといった理由から、人件費もかかりやすい傾向があります。また、多くの酒類の原価率が低い中で、ビールの原価率はやや高いという点もポイントです。肉・魚・野菜など多様な食材を扱うため、メニューによって原価率にはばらつきがあります。
加えて、食事の提供に力を入れる割烹居酒屋などの業態の場合、回転率が低いという前提も考えなければなりません。
居酒屋・バーの原価率を考える際には、以下のポイントを意識します。
複数の食事プランを組み立て、原価率が低いドリンク類の提供を促進する
顧客の目を引く期間限定メニューを考案し、客単価のアップを図る
店内飲食スペースを持たないデリバリー・テイクアウト業態の場合、ほかの業態とは原価率の考え方もやや異なります。デリバリーには配達サービスの手数料や梱包コストなどが発生するため、原価率の平均とされる30%よりも低めの目標設定が必要です。
テイクアウト専門店の場合は手数料などを抑えられますが、店内飲食の店舗よりも商品単価は低くなる傾向があります。テイクアウト業界の相場を把握し、集客が見込める適正な価格設定を心がけましょう。
外部サービスではなく直接注文を増やす施策を打ち出し、利益率を上げる
人員配置を最適化し、効率的な店舗運営に注力する
飲食店の原価率を適正化するための実践ポイントとして、以下の4点を紹介します。
食品ロスを減らす仕組みを作る(メニュー見直し/ロス分析)
価格設定を利益重視で再設計する(原価率の下限・上限を意識)
在庫管理と棚卸精度を高める(在庫回転率・発注ロットの最適化)
業務のムダを見直してコストを抑える(仕込み・オペレーションの効率化)
食品ロスを減らす仕組みづくりは、原価率を下げるための基本的な取り組みです。「どの食材が」「どの程度」廃棄されているのかを見える化し、提供するメニューについても再検討します。
食材ロスを減らすために、以下のポイントを意識します。
余った食材の「日替わりメニュー」としての活用を検討する
季節や曜日ごとにロス率をデータ化する
やみくもに原価率を下げようとすると、顧客には「魅力に乏しい店舗」という印象を与えかねません。人気の主力メニューは価格を据え置きにするなど、個別のメニューではなく全体を見渡した価格設定の「再設計」が重要です。
価格設定を再設計する際には、以下のポイントを意識します。
満足度の高いメニュー/客単価の高いメニューなどによって、原価率の下限・上限に柔軟性を持たせる
看板メニューと収益性の高いメニューを組み合わせバランス感覚を保つ
在庫管理・棚卸の精度が高まれば、連動してロス率も改善されます。「先入れ先出し」を基本に閉店後の在庫チェックを習慣化し、発注量は細かく調整しましょう。過去の在庫回転率や発注ロット数をデータとして蓄積できれば、精度向上にもより効果的です。
在庫管理の精度を高める際には、以下のポイントを意識します。
在庫チェックの習慣化による発注量の微調整を行う
IoT技術やAIによる需要予測の活用を検討する
看板メニューによっては、「どうしても原価率の高い食材を毎回仕入れなければならない」といった状況も起こり得ます。このような場合は、原価率以外でコストを削減できる要素を考えましょう。
システムを活用して業務効率の向上を図る「店舗DX」は、限られた人員で現場を回すうえでも有効な施策です。効率的な業務遂行と省人化で、人件費の削減を見込めます。
業務効率を見直す際には、以下のポイントを意識します。
自動化・省人化できる業務を洗い出す
システムやツールの導入を検討する
「STOREPAD」は、集客まわりに強みを持つ店舗向けのDX支援ツールです。飲食店に特化した機能も多く備えており、集客〜追客までをワンストップでサポートします。
STOREPADでGoogleビジネスプロフィールやSNSの運用を効率化すれば、プロモーションに費やす労力・コストを削減できます。人員配置の最適化を実現するとともに、コア業務にも専念できる点が大きな魅力です。
原価率の管理に課題を感じている方も、まずは集客施策から見直してみませんか。こちらの資料ダウンロードフォームから、お気軽にお問い合わせください。
店舗ビジネスの成功を左右するのは「集客」と「顧客満足度」です。店舗事業者が押さえるべき基本的な集客手法から、ポータルサイトやホームページの活用法、Googleビジネスプロフィールの攻略ポイント、SNSマーケティングの基礎知識、さらにはUGC(ユーザー生成コンテンツ)や口コミの活用まで、実践的なノウハウをぎゅっと詰め込みました。 無料でダウンロードできますので、ぜひお店の集客やマーケティングに役立ててください。

【SV・マネージャー向け】飲食店QSCチェックリスト オペレーションと接客を整える実用ガイド
トレンド・ノウハウ
飲食

時間も人手もかけずに飲食店の集客効果を最大化するMEO活用法
トレンド・ノウハウ
飲食

【虎の巻 第1章】店舗事業者に向けた集客手法の基礎知識
トレンド・ノウハウ
監修者プロフィール
折川 穣(Jo Orikawa)
IXYASのCMO。ex-Google。複数のスタートアップにて営業・マーケ・CS組織を立ち上げ、SaaSのAPI連携や販売代理モデルを構築。Microsoftではパートナーと連携し、AI市場の拡大戦略を推進。MAIAの取締役COOを兼務。https://www.linkedin.com/in/jorikawa/
