
観光庁の調査によると、2024年の訪日外国人の旅行消費額は約8.1兆円です。日本人の国内旅行消費額と比べて約3分の1の規模ですが、オフシーズンは日本人旅行者も減るため、インバウンド対策に力を入れようと考えている経営者もいるのではないでしょうか。
インバウンドには地域経済の活性化や新たな雇用などの経済的な恩恵がある一方で、オーバーツーリズムといった課題もあり、適切なマーケティングが求められます。そこで本記事では、インバウンド対策に効果的なマーケティング手法などを解説します。
※■POINT※
・インバウンドの経済効果は8.1兆円規模で、地方経済活性化の鍵
・オーバーツーリズムや物価高騰への対策が広告戦略の成功に不可欠

観光庁が公開した「インバウンド消費動向調査」を参考に、インバウンドが観光業界に与える経済効果を見ていきます。併せて、現在の動向や今後の予測についても解説します。
観光庁の調査によると、2024年のインバウンドの旅行消費額は8.1兆円で、1人あたりの消費額に換算すると、およそ22万7,000円です。以下の国が全体の6割を占めています。
▼国別上位5市場(全体の65.7%を占めます)
中国(1兆7,300億円)(21.2%)
台湾(1兆1,000億円)(13.4%)
韓国(9,600億円)(11.8%)
米国(9,000億円)(11.1%)
香港(6,600億円)(8.1%)
旅行消費額を用途別で見ると、宿泊費が33.6%と最も多く、次いで買い物代が29.5%、飲食費の21.5%と続きます。
また近年は価値観の多様化により、訪日外国人の旅行スタイルが変化しています。家電製品やブランド品の購入といった「モノ消費」から、日本の文化・伝統・四季を楽しむ「コト消費」にシフトしています。
旅行消費額はコロナ禍で一時 0.7 兆円まで落ち込みましたが、2023年には 5.3 兆円に回復し、2024年には過去最高を記録しました。円安による購買力向上とアジア主要国の所得増加が追い風になっています。
政府は2024年に策定した「観光立国推進基本計画」で 訪日客 6,000 万人 の目標を掲げており、今後はインフラ投資や地方誘客策がさらに加速すると見込まれます。

インバウンドは、単に旅行消費を押し上げるだけでなく、地域社会や日本全体に多面的なメリットをもたらします。代表的な6つの効果を、最新データとともに整理しました。
都市部に集中しがちだった訪日需要は地方へも波及しつつあります。観光庁によると、地方部での外国人旅行消費額は2019年の1兆1,600億円から2024年には1兆7,300億円へと約1.5倍に増えました。この伸びは地方の宿泊施設・飲食店・小売店に直接的な売上をもたらし、地域経済全体のテコ入れにつながります。
コロナ禍で落ち込んだ訪日客数と消費額は2023年から急速に回復し、政府は2030年に訪日客6,000万人を目標としています。需要が戻ることで宿泊・交通・レジャー関連への投資が活発化し、観光業全体の生産性向上が期待できます。
訪日外国人がSNSで発信することで、日本人が当たり前と感じていた価値(公共交通の正確さや町の清潔さ、接客マナーなど)が再評価されます。さらに、アニメ・漫画・和食・温泉といった文化資産にも改めてスポットが当たり、国内外でブランド価値が高まります。
訪日客の増加に対応して、宿泊・飲食・観光ガイド・交通インフラなど幅広い分野で雇用機会が拡大します。特に地方では、若者のUターンやIターン就職を促し、人口流出防止の一助となります。また公共交通の増便など二次的な利便性向上も見込めます。
多言語対応の案内板、公衆Wi-Fi、キャッシュレス決済など“観光インフラ”が整備されると、訪日客の満足度が向上します。成田空港や関西国際空港の多言語サイン、主要観光地のガイドアプリ導入はその一例で、日本人旅行者にも恩恵があります。
地域の祭りや伝統工芸体験に訪日客が参加することで相互理解が深まります。こうした交流は、外国人への先入観を解消し、「人や国の不平等をなくそう」というSDGs目標にも貢献します。
インバウンドは多くの恩恵をもたらしますが、訪日客の急増により解決すべき課題も顕在化しています。ここでは代表的な4つの課題を、事例や調査結果を交えながら整理します。
オーバーツーリズムとは、観光客の急増により、地域のキャパシティを超えた負荷がかかる現象です。日本では特に京都市・鎌倉市などで顕著になっており、以下のような問題が発生しています。
公共交通機関の混雑により、通勤/通学が困難になる
観光地での騒音やゴミの増加
無断撮影、立ち入り禁止区域への侵入などのマナー違反
観光地の住民からは「生活に支障が出ている」と声が上がることもあり、住民満足度の低下が課題となっています。
訪日需要がピークを迎える時期には、宿泊料金や飲食・交通費が上昇しやすくなります。宿泊施設は客室数を急に増やせないため、繁忙期に料金を上げてオフシーズンの割引分を補填する必要があります。結果として、近隣住民の家賃や生活費にまで影響が及び、日本人旅行者の旅行コストも増大します。
観光庁の「訪日外国人の消費動向」調査によると、訪日客の約6割がリピーターですが、オーバーツーリズムや物価高騰といったネガティブな体験が、再訪意欲を低下させる原因になります。「せっかく日本に来たのに混雑や騒音で楽しめなかった」「物価が高すぎて期待外れだった」といった声が口コミやSNSで拡散されると、日本の観光ブランドそのものに悪影響を及ぼすリスクもあります。
法務省の「外国人との共生に関する意識調査」によると、日本人の約8割が「外国人には日本のルールやマナーを守ってほしい」と考えています。
電車内での大声での会話
指定場所以外での喫煙や飲食
公共スペースでの順番無視や割り込み
上記のような訪日外国人の行動は、外国人に悪意があるわけではなく、単に文化やルールを知らないケースが多いです。したがって、訪日外国人向けにマナーやルールを多言語でわかりやすく案内する取り組みが求められます。
参考:法務省「外国人との共生に関する意識調査(日本人対象)」
インバウンドによる経済効果や地域の活性化を最大限に引き出すには、戦略的なマーケティングが欠かせません。特に効果的な4つのアプローチを紹介します。
まず「誰に届けるのか」を具体化します。年齢層・国籍・旅の目的を具体的に設定することで、適切な言語対応やコンテンツ企画につなげることができます。
例えば台湾や香港からの旅行者は、リピーターや個人旅行者が多く、宿泊や移動、飲食などを自ら手配する傾向があります。この層へは多言語対応の公式サイトやオンライン予約・決済機能を整備し、セルフサービスで情報収集できる環境を用意すると利便性が高まります。
言語の壁はインバウンド集客における最大のハードルです。自動翻訳ツールは手軽に使える反面、文法の誤りや不自然な言い回しにより、訪日外国人からの信頼性を失う恐れがあります。特に予約や決済といった重要な操作の際に、不安を感じさせてしまう可能性もあるでしょう。
理想はプロ翻訳ですが、コスト負担が大きい場合は「予約ページ」「料金表」「FAQ」など要所のみを人力翻訳し、その他は自動翻訳を併用する方法でも効果が期待できます。
また、ブログ・SNS・口コミ返信など日次で発生する更新業務は多言語一括投稿ツールを活用することで負荷を大幅に軽減できます。
観光客の増加は喜ばしいことですが、過度に集中するとオーバーツーリズムになる恐れがあります。オーバーツーリズムの代表的な対策には、以下があります。
混雑状況のリアルタイム表示
事前予約制の導入による入場制限
観光税/宿泊税の導入による人数抑制と財源確保
混雑する時間帯/エリアの分散誘導
また地元住民と連携したガイド活動・清掃活動など、「住民参加型の観光づくり」は、地域との共存・共栄を図るうえで有効な手段です。
国土交通省の調査によると、訪日外国人の約8割が「地方を訪れたい」と回答しています。背景には、都市部では味わえない「ローカルな体験」や「その土地ならではの食・文化」への関心の高まりがあります。
しかし地方は、都市部に比べて知名度が低く、旅行先の選択肢に入らないケースも少なくありません。したがって、地域の特性を掘り起こし、それを魅力的なストーリーとして発信する必要があります。具体的には、以下のような対策があります。
地元の伝統工芸体験や食文化をコンテンツ化
季節限定イベントや祭りの情報発信
自然や歴史にまつわるストーリーを動画やSNSで紹介
参考:国土交通省「観光の動向」
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監修者プロフィール
遠藤 啓成(Endo Hiromasa)
イクシアス株式会社 マーケティング・セールス室 室長。USENにてPOSレジをはじめとするDXサービス全般のマーケティングや事業企画、店舗事業推進部企画課課長として飲食店やホテルの運営にも従事。複雑化する店舗のWEB集客課題を解決したいという強い思いからイクシアスに参画。フリーランスの美容師としても活動中。管理美容師、化粧品検定1級、食品衛生管理責任者、防火防災管理者、ITパスポートを保有。USEN時代には、優れた業績を評価されGOODJOB賞を受賞。
