
「新しくビジネスを始めたい」「独立して店を出したい」など、店舗経営を志すきっかけはさまざまです。特にはじめて店舗を持つ場合は、押さえておくべきポイントも数多くあります。
今回は、開業までの具体的なステップやよくある課題など、店舗経営に必要な基礎知識を網羅的に紹介します。
※■POINT※
・店舗経営では、継続的な利益を上げ、利益の最大化を目指す。
・収益を早期にあげるには、開業前から早めにSNSで宣伝を行いファンを獲得することが大切。

店舗経営を始めるにあたって、まずは経営者が担うべき役割・責任を把握しておく必要があります。はじめに、店舗経営についての基本知識を整理しましょう。
「店舗経営」は、収益の獲得を目的とした店舗の取り組みを指す言葉です。店舗は顧客に対して商品・サービスを提供し、対価として収益を得ます。
店舗における経営者は、店舗の維持・展開に関する決裁権と責任を持ち、経営方針や計画を決定しなければなりません。経営者が担う役割・責任には、以下のようなものが挙げられます。
顧客への価値提供
利益の増加を通じた店舗の成長
事業を通じた社会貢献
運営のための正しい意思決定
スタッフの安全や福利厚生の担保
加えて、キャッシュフローの適切な把握といった収支管理や事業計画に向けた営業活動なども、店舗経営者の重要な役割です。
「店舗経営」と混同されがちな言葉が「店舗運営」です。両者には、以下の違いがあります。
店舗経営 | 店舗運営 | |
役割 | 店舗全体の方向性の決定 | 店舗内部の業務管理 |
具体的な業務 | 店舗コンセプトの設計 | 在庫/仕入管理 |
目的 | 店舗の収益化 | 業務の効率化 |
「継続的な利益の追求」を目的とする店舗経営者に対し、店舗運営者は店舗内部を取りまとめ、業務管理や人材管理を担います。「店舗経営者の下で業務の円滑化・効率化を担当するポジション」が店舗運営者だと理解すると良いでしょう。

ここからは、実際に店舗を経営するまでの手順を紹介します。
まずは以下のステップに沿って、店舗経営に向けた準備を進めましょう。
1.コンセプト設計と事業計画
2.資金調達
3.必要な資格の取得
まずは、開業したい店舗のコンセプトを決めましょう。
飲食店であれば料理のスタイル(和食、洋食、中華など)、雑貨店であれば商品スタイル(欧風、北欧風、エスニックなど)を決定します。ターゲットの属性(年齢帯や性別など)もコンセプトの一つです。
次に事業計画書を作成します。事業戦略や収支予測などをまとめた書類であり、融資・補助金などを受け取る際に必要です。
事業計画書には、主に以下の内容を盛り込みます。
事業内容
経営理念(ビジョン、バリューなど)
創業メンバーの略歴
事業計画/資金調達方法
売上見込み
立地や競合について
日本政策金融公庫の調査(2024年)によると、店舗を開業する経営者の65.2%が金融機関からの借入を行っています。借入をする場合、政府金融機関による融資や地方自治体が窓口となる制度融資、銀行・信用金庫からのプロパー融資のいずれかを選択するケースが一般的です。
なお、金融機関からの借入以外の資金調達方法は、「自己資金」「親戚や友人・知人からの出資」などとなります。
金融機関からの融資によって開業資金を調達する際、先述した事業計画書の提出が必要です。
店舗経営者となるうえで、必ず取得しなければならない資格はありません。ただし飲食店などの場合、特定の資格を保有した従業員を配属する必要があります。経営者本人が有資格者であれば、有資格者退職時の懸念がなくなるため安心です。
具体的には、以下の資格の取得を検討しましょう。
食品衛生責任者
各自治体が指定する講習会を1日受講することで取得できる。試験はなく、講習修了後に修了証が交付される。費用は地域差があるが、1万円前後が目安。
防火管理者
店舗の収容人数が30人を超える場合には、防火管理者の資格が必要。消防署または外部機関が実施する講習を受講して取得する。講習には甲種・乙種の区分があり、所要時間は1〜2日程度。
酒類販売業免許(酒類を未開栓で販売する場合)
所轄の税務署に申請書類を提出し、審査を受ける必要がある。申請には店舗図面や経営計画などの書類が求められ、審査には1〜2か月を要する場合も。
事業や資金に関する方針が定まったら、次は商圏とする立地や物件を選びます。
4.店舗の物件探し
5.内装・外装・機材など設備投資の準備
資金調達や資格の取得など、経営に関わる事前準備が済んだら、店舗にする物件を探しましょう。コンセプトや事業計画書にマッチした物件選びが大切です。併せて周辺エリアのチェックも行い、集客が見込めるかどうかを検討します。
物件を契約する際には、初期費用が発生する。保証金や敷金、礼金、仲介手数料、前払い家賃などが一般的で、物件によっては契約更新料も必要です。費用は地域や物件の条件によって異なりますが、一般的には家賃の6〜10か月分程度を見込んでおきます。たとえば家賃が月10万円の場合、初期費用として60万〜100万円程度が必要です。
加えて、物件の用途地域が目的とする業態に対応しているか、飲食業が許可されているかどうかも確認すべきポイントです。用途地域によっては営業許可が下りないケースもあり、事前に自治体の担当窓口に確認することが望ましいです。
店舗のコンセプトに合った内装・外装に仕上げていく工事の段階に進みます。施工業者に自分のイメージを的確に伝えるためには、店内レイアウトの図や具体的な席数、什器配置の案などを用意しておくとスムーズです。
内装工事にかかる費用は業態やデザインのこだわりによって異なりますが、一般的な飲食店の場合、1坪あたり10万〜30万円程度が相場です。工期は2週間から1か月程度が目安ですが、内容によって前後することもあります。オープン日から逆算して、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
この段階で店舗で使用する備品の準備も進めます。商品の陳列に使う什器や、飲食店であれば食器・調理器具・冷蔵設備などが該当します。照明の色合いや壁紙のデザインといった空間演出も、店舗の印象を大きく左右するため、細部まで意識して選定しましょう。
備品や設備に中古品を活用することでコストを抑えることも可能です。中古の場合は、動作確認や保証の有無をしっかり確認します。店舗向けの専門業者やECサイト、展示会などの活用が一般的です。
厨房機器や空調設備など一部の設備については、消防法や衛生基準に適合している必要があります。飲食店では保健所のチェックが入るため、事前に要件を確認したうえで選定することが重要です。
設備の中にはリースやレンタルで導入できるものもあります。初期費用を抑えたい場合や、一定期間のみ使用する予定がある場合は、これらの方法も検討してみてください。
物件を決め、店舗のレイアウトも整えば、最後は運営体制を整えるステップです。
6.マニュアル・チェックリストの作成
7.行政への各種届け出
8.スタッフの採用・教育
9.宣伝・集客
開業時からサービスの質を高水準に安定させるために、マニュアルの作成は必須です。
スタッフ向けのマニュアルには、就業規則などを定めた「基本マニュアル」と、具体的な接客対応のノウハウなどを示す「オペレーションマニュアル」の2種類があります。
以下は、基本マニュアルに盛り込むべき内容の一例です。
店舗の運営方針
身だしなみに関する規則
業務に際してのマインドセット など
オペレーションマニュアルには、以下のような内容を盛り込みます。
接客対応
レジ操作方法
清掃業務 など
法人で店舗を開業する場合には、会社設立登記の手続きが必要です。また、個人で開業する場合にも「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署へ提出する必要があります。
そのほかにも店舗の業態に応じて、以下のような各種届け出を済ませましょう。
飲食店 | 食品営業許可(→保健所) |
美容室、サロンなど | 美容所開設届(→保健所) |
パン屋、ケーキ屋など | 菓子製造許可(→保健所) |
宿泊施設 | 旅館業許可(→保健所) |
中古品を扱う店舗 | 古物商許可(→警察署) |
オープニングスタッフを募集するにあたっては、店頭掲示や求人情報誌への掲載に加え、求人アプリやSNSの活用といったデジタルな手法も存在します。採用のミスマッチを回避するためには、求める人物像や歓迎する経験・スキルの明確化が重要です。
採用する人材が決まったら、オープン前のスタッフ教育を実施します。スタートから質の高いサービスを提供するうえでも大切なステップです。
あらかじめ作成したマニュアルをもとに、オペレーションについての研修を行いましょう。
オープン後に顧客が定着するよう、宣伝などの施策を打ち出します。ターゲットが決まった段階で「ファン」獲得を狙うSNSアカウントを開設するなど、先手でのマーケティング施策が効果的です。
■オープンの1〜2か月前
SNSアカウント(Instagram、Xなど)を開設し、内装工事の様子やコンセプト、取り扱う商品・メニューの紹介といった投稿を始めましょう。反応があれば、コメントへの返信や「いいね」を通じて、ユーザーとの関係づくりを意識します。開業前からコミュニケーションを始めることで、「応援したい」「行ってみたい」と感じるファンを増やせます。
■オープン後
近隣住民へのポスティングや地域メディアへの情報掲載、Googleマップの店舗登録、LINE公式アカウントなども活用し、複数チャネルからの集客を図ります。初回来店時限定の割引やプレゼントキャンペーンなどを用意すると、来店のハードルが下がります。
ここからは、店舗経営でつまずきやすい以下6点の課題について、対処法も併せて解説します。
集客がうまくいかない
事業計画と現状にギャップがある
キャッシュフローと資金繰りが不安定に
店舗のコンセプトや経営方針がぶれている
スタッフの定着率が低下している
事務作業に時間を取られてしまう
集客施策はやみくもに打ち出すのではなく、現状を分析し、消費者行動を理解したうえでの実施が重要です。ここでは、集客力を高められる3つのフレームワークを紹介します。
AIDMA(アイドマ)
消費者が商品・サービスを購入するまでの流れを表すフレームワークです。Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)、それぞれの頭文字から取られています。
たとえば、「お店の存在を知られていない(=Attentionが不足)」なら、認知度を上げるためのチラシ配布やGoogleマップの登録が効果的です。「行きたいと思われていない(=Desireが不足)」なら、他店と差別化されたメニューや魅力的な写真をSNSで発信する施策が考えられます。
4C分析
顧客の視点から、商品・サービスについて分析するためのフレームワークです。
Customer Value(顧客にとっての価値)、Cost(顧客が負担する時間・費用)、Convenience(利便性)、Communication(顧客との間に生まれるコミュニケーション)という「4つのC」から成り立っています。
たとえば「駅から遠い」という不利があるなら、アクセス補足や周辺マップの工夫で「Convenience(利便性)」を補うといった使い方ができます。
4P分析
店舗や商品・サービスの持つ要素を再認識するためのフレームワークです。Product(特性)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促活動)という「4つのP」から成り立っています。
4C分析と4P分析を組み合わせると、「自店の商品は顧客にとってどんな価値があるのか」「この価格は妥当か」といった検証ができます。
当初の事業計画と現状の経営にギャップがある場合、事業計画書はその都度修正が必要です。
事業計画書を「作りっぱなし」にしてしまうと、形式的であまり意味のないものになってしまいます。
たとえば「計画外のコストへの補てん方法」など、当初は予想していなかった課題への対処法を定期的に追記すれば、実用的で意義深い事業計画書になります。
「店舗が成長していくためには何をすべきか?」といったテーマについて考え、PDCAサイクルを回すなかでも、事業計画書の追記・修正は有効です。
店舗を経営するうえで必ず避けたい事態が「黒字倒産」です。黒字倒産とは、決算上では利益が出ているにも関わらず、資金繰りの不備などにより事業が立ち行かなくなる状態を指します。
資金繰りが不安定になる原因の多くは、キャッシュフローに対する理解不足です。収益が計上されるタイミングと、実際にお金の流れが発生するタイミングは異なります。店舗の資産状況を示す「貸借対照表」や「損益計算書」の内容をしっかりと把握しておくことが大切です。
「ぶれのない経営」のためには、明確なコンセプト設計が重要です。いっときの流行や売れ行きに左右されてコンセプトを変えてしまうと、一時的な顧客の増加はあっても、リピーターの定着には結びつかない可能性もあります。
冒頭で紹介したとおり、店舗経営の目的は「店舗の収益化」です。継続的に利益を上げ、事業を継続させるという本来の着地点を忘れないようにしましょう。
「サービスの品質低下」「スタッフの負担増大」など、店舗の人材不足は多くの課題の原因となるため、早期解決が必要です。人材不足の解消方法としては、以下の対策が考えられます。
複数チャネルでの求人募集(インターネット、SNSなどの活用)
既存スタッフの働きやすい環境整備
店舗への愛着を醸成する仕組みづくり(スキルアップの機会提供など)
アルバイトスタッフからの正社員登用
在庫管理や売上管理といった事務作業の煩雑さに課題を感じている場合、業務効率化のための店舗DX化を検討しましょう。効率的な業務は、サービスの品質や顧客満足度の向上にもつながる重要な要素です。。
たとえばPOSシステムと連動した在庫管理ツールを導入すると、仕入に関わる業務の負担が軽減されます。
店舗経営の業務をサポートするツールとしては、主に以下の4種類が挙げられます。
会計管理ツール
勤怠管理ツール
顧客情報管理ツール
口コミ管理ツール
主に確定申告などで役立つ会計管理ツールですが、仕訳データを活用すれば、損益計算書や貸借対照表の作成にも有効です。
「どの商品が・どの時期に・どれくらい売れたか」といった売上管理にツールを活用すると、定量的なデータとして経営戦略に役立てることができます。
従業員の出退勤時刻やシフトを管理するツールです。出退勤の状況をデータ化すれば把握が容易になるほか、「どのスタッフが・いつ出勤するのか」についても管理しやすくなります。
顧客の情報を蓄積し、一元管理するツールです。顧客情報として住所や年齢を把握しているのであれば、「どの層に届きやすいか」「ターゲットに向けたマーケティングができているか」などの傾向が明らかになります。
SNSやGoogleマップ、レビューサイトなど、オンライン上での口コミやレビューを集約・管理できるツールです。口コミは多くの閲覧ユーザーが参考にする評価であり、店舗のイメージにも直結します。
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監修者プロフィール
折川 穣(Jo Orikawa)
IXYASのCMO。ex-Google。複数のスタートアップにて営業・マーケ・CS組織を立ち上げ、SaaSのAPI連携や販売代理モデルを構築。Microsoftではパートナーと連携し、AI市場の拡大戦略を推進。MAIAの取締役COOを兼務。https://www.linkedin.com/in/jorikawa/
