
訪日外国人旅行者が増え、インバウンド需要は宿泊施設だけでなく、飲食店や小売店、美容室などにも広がっています。これまで接点のなかった旅行者に商品やサービスを知ってもらえる反面、外国語での案内や問い合わせ対応、店舗情報の更新など、現場の業務も増えます。また、需要は為替や国際情勢にも左右されます。
本記事では、インバウンドの増加によって店舗や地域に何が起こるのかを整理し、Googleビジネスプロフィールや口コミ、多言語対応、キャッシュレス決済など、店舗で実践できる対策を紹介します。
インバウンドとは、外国から自国を訪れる旅行のことです。日本では、海外から日本を訪れる旅行や訪日外国人旅行者という意味で使われています。旅行中の宿泊、飲食、買い物などによって国内で生まれる消費は「インバウンド消費」と呼ばれます。
反対に、自国から海外へ出かける旅行が「アウトバウンド」です。
インバウンドの意味や経済効果について詳しく知りたい方は、インバウンドの意味とは?観光業界の経済効果と2030年6,000万人時代の展望もあわせてご覧ください。
訪日外国人旅行者数の増加に加え、為替や政府の観光政策もインバウンド需要を後押ししています。
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外客数は4,268万3,600人で、前年比15.8%増となり、年間の過去最多を更新しました。2026年7月も推計344万2,100人となり、7月として過去最高を記録しています。
訪日客の消費先は宿泊施設に限りません。飲食店や小売店などにも需要が広がっており、店舗にとっても新たな顧客層になっています。
訪日外国人旅行者が増えている背景については、なぜ外国人観光客が増えているのか?観光業が取るべき最新インバウンド対策もあわせてご覧ください。
為替が円安方向に動くと、海外からの旅行者にとって、日本での宿泊や飲食、買い物などの割安感が高まります。日本を旅行先として選ぶうえで、為替も判断材料の一つになります。
為替は変動するため、円安による需要だけを前提にはできません。
政府は、2026年3月27日に閣議決定された第5次「観光立国推進基本計画」で、2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円などの目標を掲げています。
計画では、訪日客数や消費額の拡大だけでなく、地方への誘客やオーバーツーリズムへの対応、住民生活との両立も盛り込まれています。地域でも、多言語案内やキャッシュレス決済、観光資源を生かしたサービスづくりなど、受け入れ環境の整備が進んでいます。
インバウンドが増えると、訪日客による消費が店舗や地域に広がり、これまで接点のなかった海外の顧客にも商品やサービスを知ってもらえるようになります。主なメリットは以下の4つです。
訪日客による消費が増える
地域に消費が広がる
海外との交流が増える
これまで接点のなかった顧客に届く
観光庁の「インバウンド消費動向調査」によると、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円で、前年から16.4%増加しました。費目別では宿泊費が36.6%と最も多く、買物代が27.0%、飲食費が21.9%を占めています。
消費先は宿泊施設だけではありません。飲食店や小売店、体験型サービスなどにも広がるため、店舗にとっては国内客以外から売上を得る機会になります。
ただし、客席や客室には上限があります。訪日客が増えても、既存客との入れ替わりになれば売上がそのまま純増するとは限りません。繁忙時間帯の混雑やスタッフ数も見ながら、受け入れられる人数を判断します。
※出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(確報)」(2026年3月31日)
訪日外国人旅行者が地域に滞在すると、宿泊だけでなく、飲食や買い物、観光、移動にもお金が使われます。観光施設を訪れた人が周辺の飲食店で食事をしたり、商店で買い物をしたりすれば、地域内の複数の事業者に消費が広がります。
訪日客から注目されたことをきっかけに、郷土料理や伝統文化、自然など、地域では身近だったものが観光資源として見直されることもあります。
旅行者が一部の地域や時間帯に集中すれば、混雑や住民生活への影響も出ます。この点は、後述するオーバーツーリズムの問題とも切り離せません。
訪日客が増えれば、店舗や地域で外国人旅行者と接する場面も増えます。郷土料理を食べてもらったり、伝統工芸を体験してもらったりするなかで、日本の文化や地域の暮らしを直接伝えられます。
店舗や地域での体験が口コミやSNSで紹介されれば、その情報はこれから日本を訪れる海外の旅行者にも届きます。
国内客を中心に営業してきた店舗にとって、訪日客はこれまで接点の少なかった新しい顧客層です。
飲食店なら郷土料理や季節のメニュー、小売店なら日本製の商品や地域限定品、美容室なら日本で受けられる施術など、国内客には身近な商品やサービスが訪日客には来店理由になることがあります。
来店した旅行者が口コミやSNSで店舗を紹介すれば、次に日本を訪れる人が店を知るきっかけにもなります。
インバウンド需要が伸びても、店舗にとってプラスに働くとは限りません。需要の変動や混雑、外国語対応など、受け入れる側の負担も増えます。主なデメリットは以下の3つです。
外部要因で需要が変わりやすい
観光客の集中が地域や店舗の負担になる
多文化・多言語対応で運用業務が増える
インバウンド需要は、自然災害や国際情勢、海外の景気、為替など、店舗側ではコントロールできない要因に左右されます。
新型コロナウイルスの感染拡大時には、訪日外国人旅行者が大幅に減少しました。円高で日本旅行の割安感が薄れたり、訪日客の多い国・地域で景気が悪化したりすれば、客数が落ち込むこともあります。
インバウンド客への依存度が高い店舗ほど、こうした変化が売上に直接響きます。国内客にも継続して来店してもらえる状態を保つことで、需要が落ち込んだときの影響を抑えられます。
旅行者が特定の地域や観光地に集中すると、交通機関や施設の混雑、騒音、ごみ、マナーなどの問題が起こります。こうした状態が「オーバーツーリズム」です。
店舗でも、来店が一部の時間帯に集中すれば、客席やスタッフの対応能力を超えます。待ち時間が長くなったり、接客が行き届かなくなったりするほか、訪日客で満席になり、これまで利用していた国内客が入りにくくなることもあります。
地域や店舗が一度に受け入れられる人数には限りがあります。繁忙時間帯やスタッフ数、既存客への影響まで含めて、どこまで受け入れるかを決めておく必要があります。
訪日客が増えると、外国語での接客だけでなく、メニューや案内表示、Webサイトの翻訳、問い合わせ、口コミへの返信、店舗情報の更新など、日常業務も増えます。
人手が限られている店舗では、こうした作業を特定のスタッフに任せると負担が集中します。複数店舗を運営している場合も、翻訳や口コミ対応を各店舗に任せきりにすると、掲載情報や対応方法にばらつきが出ます。
翻訳ツールや多言語メニュー、FAQを使えば、すべてをスタッフの語学力で対応する必要はありません。ただし、アレルギーや宗教上の食事制限など、健康や安全に関わる情報を自動翻訳だけに任せるのは避けるべきです。誤訳が直接トラブルにつながるため、内容を確認してから案内します。
接客はスタッフ、定型的な案内はFAQ、口コミや店舗情報の翻訳はツールというように、業務ごとに対応方法を決めておくと、特定のスタッフへの負担集中を防げます。
訪日客に来店してもらうには、店舗を「見つける」「選ぶ」「利用する」までに必要な情報をそろえておきます。主な対策は以下の6つです。
必要な情報を多言語で整える
訪日外国人のニーズを把握する
Googleビジネスプロフィール・口コミ・SNSを整える
地域の特色を生かした商品やサービスを用意する
業種に合った予約・情報サイトを活用する
キャッシュレス決済に対応する
最初からすべてに手を広げる必要はありません。営業時間やメニュー、口コミ、決済方法など、来店前に確認されやすい情報から着手し、実際の訪日客の反応を見ながら対応範囲を広げます。
すべての言語に対応するのではなく、自店舗を利用する訪日客の国・地域を確認し、利用者が多い言語から対応します。
営業時間、所在地、メニュー、料金、予約方法、支払い方法など、来店前に確認したい情報を優先します。外国語で同じ問い合わせが繰り返される場合は、翻訳ツールや多言語FAQを用意しておくと、スタッフが毎回答える手間を減らせます。
訪日客を一括りにすると、対策がずれます。国・地域や年代だけでなく、個人旅行か団体旅行か、旅行目的や予算によって、選ぶ店舗や情報収集の方法も変わります。
来店時のヒアリングやアンケートに加え、Googleマップの口コミやSNS投稿も参考になります。「どの商品が評価されているか」「何を見て来店したのか」「どこで不便を感じたのか」を確認すると、自店舗で優先すべき対応が見えてきます。
口コミを店舗改善に活用する方法については、【店舗事業者必見】口コミ、読み流していませんか?も参考にしてください。
訪日客が店舗を探すとき、GoogleマップやSNSに載っている情報も店舗選びの材料になります。営業時間や所在地、写真、メニュー、料金などが実際の店舗と食い違っていれば、来店を見送ったり、確認の問い合わせが増えたりする原因になります。
口コミでは、星の数だけでなく、写真やコメントから店内の雰囲気やサービス内容も確認されます。外国語の口コミにも可能な範囲で返信し、同じ指摘が繰り返されていれば店舗運営にも反映します。
InstagramやTikTokでは、料理や商品、店内の様子を写真や動画で伝えられます。Googleビジネスプロフィールでは20時閉店、SNSでは21時閉店といった食い違いが起きないよう、営業時間や料金などの基本情報は定期的に見直します。
Googleマップの活用については、米国GoogleマップAIトレンド徹底解説も参考になります。
訪日客にとって、その地域の食や文化、自然は旅行先を選ぶ理由の一つです。地元の食材を使った料理、地域限定の商品、伝統文化に触れられる体験など、すでに提供している商品やサービスの中から、訪日客に伝えられる魅力を洗い出します。
新商品を一から開発する必要はありません。郷土料理なら料理名だけでなく材料や食べ方まで外国語で説明する、地域限定の商品なら産地や背景まで紹介するなど、既存の商品でも伝え方を変えれば魅力は伝わります。
宿泊施設や予約可能な体験サービスでは、Booking.com、Expedia、Trip.comなどのOTA(Online Travel Agent)が海外の旅行者との接点になります。
飲食店や美容室でも、海外から店舗情報を確認・予約できるサービスに掲載すれば、来日前や旅行中に店舗を比較している旅行者へ情報を届けられます。
媒体は知名度だけで決めず、自店舗の業種や利用客の国・地域、予約機能、掲載料などを比べて選びます。
クレジットカードやQRコード決済などを利用できれば、現金を十分に持っていない訪日客でも支払いができます。
決済手段は、多ければよいわけではありません。実際に来店している訪日客の国・地域や利用されている決済方法を確認し、自店舗で使われるものから導入します。
なお、飲食店に特化した対策については、【飲食店向け】レストラン経営での効果的なインバウンド対策7選!でも詳しく解説しています。
インバウンド集客では、GoogleビジネスプロフィールやSNSなどに情報を掲載して終わりではありません。営業時間やメニュー、料金を変更したら、それぞれの媒体にも反映します。
複数の媒体を個別に更新しながら、口コミへの返信まで続けるとなると、店舗側の作業は増えていきます。特に複数店舗を運営している場合は、一部の店舗だけ営業時間が古いまま残ったり、口コミへの対応方法が店舗ごとに異なったりすることもあります。
担当者1人の記憶や作業に頼ると、繁忙時には更新や返信が後回しになりがちです。更新する情報、担当者、口コミへの対応方法をあらかじめ決め、日常業務の中で継続できる形にしておきます。
STOREPADは、GoogleビジネスプロフィールやSNS、各種ポータルサイトなど、複数媒体の店舗情報や口コミを管理できる店舗向けツールです。
複数の店舗・媒体への情報発信を一括で行えるほか、各媒体に寄せられた口コミも一つの画面で確認・返信できます。複数店舗を運営している場合は、本部から各店舗の情報や対応状況を確認でき、店舗ごとに更新や口コミ対応を管理する手間を減らせます。
外国語の口コミは翻訳して確認・返信でき、多言語での情報発信にも対応しています。訪日客向けの店舗情報を更新したり、外国語の口コミに対応したりする作業を、複数の店舗・媒体をまたいで進める際にも使えます。
インバウンド集客では、訪日客を呼び込むだけでなく、客席数やスタッフ数、既存客への対応まで含めて受け入れ方を考えます。まずは来店客の国・地域や旅行目的を把握し、営業時間やメニュー、口コミ、決済方法など、店舗選びで確認される情報から整えます。
訪日客が増えるほど、外国語での問い合わせや口コミ返信、店舗情報の更新といった作業も増えます。国内客への対応を維持しながら、繁忙時でも更新や接客が滞らないよう、誰が何を担当するのかを決めておくと運用しやすくなります。
店舗ビジネスの成功を左右するのは「集客」と「顧客満足度」です。店舗事業者が押さえるべき基本的な集客手法から、ポータルサイトやホームページの活用法、Googleビジネスプロフィールの攻略ポイント、SNSマーケティングの基礎知識、さらにはUGC(ユーザー生成コンテンツ)や口コミの活用まで、実践的なノウハウをぎゅっと詰め込みました。 無料でダウンロードできますので、ぜひお店の集客やマーケティングに役立ててください。
監修者プロフィール
遠藤 啓成(Endo Hiromasa)
イクシアス株式会社 マーケティング・セールス室 室長。USENにてPOSレジをはじめとするDXサービス全般のマーケティングや事業企画、店舗事業推進部企画課課長として飲食店やホテルの運営にも従事。複雑化する店舗のWEB集客課題を解決したいという強い思いからイクシアスに参画。フリーランスの美容師としても活動中。管理美容師、化粧品検定1級、食品衛生管理責任者、防火防災管理者、ITパスポートを保有。USEN時代には、優れた業績を評価されGOODJOB賞を受賞。
